家づくりやリフォームの場面で「筋交いが強い家です」「壁倍率が高いから安心です」
といった説明を聞くことがあります。
しかし、それらの言葉だけで本当の強さは判断できません。
この記事では、筋交い・合板・耐火面材・断熱材の正しい使い分けを、
初めての方でも理解できるように丁寧に解説します。
筋交いと壁倍率の基礎から、構造用合板・ハイパーEX・耐火面材の特徴、断熱材との相性までを丁寧に解説。
家づくりやリフォームで施工店と話をする際に“何度でも読み返せる教科書”として活用できる記事です。
家づくりの相談を受けていると、
「筋交いが入っているから強い家ですよ」
「壁倍率が高いので安心です」
といった説明を耳にします。
しかし、最初の前提として知っておいていただきたいことは一つです。
家の強さは“柱や筋交いだけ”では決まらない。
揺れに耐えるためには、
「線(柱・筋交い)」と「面(合板・面材)」をどう組み合わせるか。
ここを理解しない限り、家の本当の性能はつかめません。
筋交い(すじかい)は、壁の中に入れる 斜めの補強材。
箱を横から押したとき、斜めに棒を入れると揺れが止まる。
このシンプルなイメージがすべてです。
ただし筋交いには弱点があります。
・力が一点に集中する
・変形が始まると性能が落ちやすい
・壁全体を固める力は弱い
・木材であるため火に弱い
つまり筋交いは大切だが “家の強さの主役”ではない のです。
筋交い・構造用合板・耐火面材など、
どの材料がどれだけ耐震性を持つかを数字化したもの。
それが 壁倍率(かべばいりつ) です。
●理解のステップ
・基準点は「昔からある筋交い」=壁倍率1.0
・それより強ければ「2.0」「2.5」「3.0」「4.0」…と数字が上がる
・壁倍率が高いほど「横揺れに耐える力」が強い
●重要
壁倍率は “材料の等級” ではありません。
家づくりの設計そのものを左右する『強さの単位』です。
理由は明確です。
●耐震等級という“必ず守るべき基準”が生まれたから
耐震等級とは、地震に対して住宅がどれだけ持ちこたえるかを示す国の基準。
等級が上がるほど強く、
適切な「強い壁の配置」が求められます。
つまり、
筋交いだけでは耐震等級を満たせない。
だから面材と壁倍率が必要になった。
これが現代住宅の大前提です。
面材(合板や耐火ボード)は、壁全体で地震力を分散します。
・力が広い範囲に流れる
・壁が一体化し、ねじれに強くなる
・筋交いより変形しにくい
・耐久性が高い
つまり、
家の揺れに対して“踏ん張る力”の主役は面材です。
ここで、実務でも使われる3種類を比べます。
○① ハイベストウッド(壁倍率4.0)
・面材の中でも最強クラス
・耐震等級3を取りやすい
・外周部の強い壁に向いている
・価格は高め
○② カラマツ構造用合板(壁倍率3.0)
・標準で使いやすいバランス型
・室内側の耐力壁として有効
・加工しやすくリフォームにも適する
○③ ハイパーEX(壁倍率2.5)
・耐火面材であり、外壁下地として強い
・構造+防火の両立ができる
・外壁リフォームでもよく使う
家づくり初心者が必ず抱く疑問です。
しかし結論はひとつ。
家中すべてを4.0にする必要はありません。
理由は3つあります。
・壁倍率は“配置”が重要
どこに強い壁を置くかで家の耐震性が決まる。
・強すぎる壁は家を“固めすぎて”別の弱点を生むことがある
・コストが跳ね上がり、性能バランスが崩れる
つまり、
外周部は4.0、内部は3.0、部分的に2.5の耐火面材
という“使い分け”が本当の正解となります。
構造用合板そのものは密度が高く、断熱性能が低い。
一方、断熱材は「空気を閉じ込める量」で性能が決まります。
だから、
合板単体・耐火面材単体では断熱として不足する。
では何を組み合わせるべきか。
●外壁側(防火+耐震)
ハイパーEX(2.5)
+
高性能グラスウール or ロックウール
→ 外壁の防火性能を確保しつつ断熱性も十分。
●内壁側(施工性+耐震)
構造用合板(3.0)
+
発泡系断熱材(スタイロフォームなど)
→ 加工しやすくリフォームにも向く。
●高強度が必要な外周部
ハイベストウッド(4.0)
+
ロックウール
→ 等級3狙いの新築に最適。
●外周部
・最重要耐力壁
・壁倍率4.0(ハイベストウッド)
・耐火を考慮するならハイパーEX2.5も併用
●内部の補強壁
・壁倍率3.0(構造用合板)
・リフォームで最も使いやすい
●水回り・火気設備周辺
・耐火性の高いハイパーEX
・湿気に強い断熱材を併用
断熱の違いを数値で説明しても分かりにくいため、
ここでは身近なたとえをひとつ。
●断熱性の高い家
お風呂を 42℃ にして、
一時間後に 40℃ が残っているイメージ。
●断熱性の低い家
同じ 42℃ を入れても、
一時間後には 34〜35℃まで下がってしまう。
つまり、
“家の断熱性能の差” は、お風呂の温度の落ち方と同じ。
壁材と断熱材の組み合わせが正しくないと、室温はすぐ冷えるのです。
家づくりやリフォームの場面では、
専門家と一般の施主とのあいだに知識の差が大きく存在します。
だからこそ、迷ったときには必ず思い出してください。
筋交いとは何か。
面材の働きとは何か。
どこにどの壁倍率を配置すべきか。
断熱材は何と組み合わせるべきか。
これらはすべて、
あなたの生活と安心を守るための“基礎体力”です。
施工店と話すとき、
家の計画で悩んだとき、
自分の判断が正しいか不安になったとき——
どうかこの記事を開いて、
ゆっくり読み返してください。
必ず役に立ちます。
そして読むたびに、あなたはひとつ強くなります。