30坪の中古住宅は“1人で手ばらし解体できる”──段取り・安全・作業の本質

2025年12月04日 11:31



中古住宅のリノベーションを進めるとき、

最初の大きな壁になるのが「解体」です。



専門業者に頼む方が安心ですが、

「できる部分だけ自分でやりたい」

「解体の流れを知っておきたい」

という方も多いでしょう。



私は40年以上、現場で木造住宅の解体に携わり、

30坪程度であれば1人で5日ほどで内装から屋根まで解体する

という作業を繰り返してきました。



この記事では、力任せではなく“段取りと安全”で進める

木造解体の本質をわかりやすくまとめています。


DIYとして真似できる部分、

決して触れてはいけない危険ポイントを

明確に分けてお伝えします。




■ 1. 解体とは“壊す作業”ではなく   構造を早く見せる作業である




解体は、壁や床を壊す作業だと思われがちですが、

本質はまったく違います。



解体作業で最も大切なのは、

「いかに早く構造体(柱・梁・筋交い)を露出させるか」

です。



骨格が見えれば、


・壊す順番

・危険箇所

・重機を入れるタイミング



がすべて読めるようになります。


逆に、構造が見えない状態で勢いよく壊すと、

必要な部材まで破損したり、倒壊の危険が生まれます。



“構造を読む作業こそがプロの速度の理由”です。




■ 2. 解体の最初の仕事は「壊すこと」ではなく   廃材置き場の確保である




解体は、最初の一撃をどこに入れるかよりも、

廃材をどこへ置くかが勝負です。



木材、石膏ボード、金属、断熱材、タイルなど、

素材ごとに処分場も搬出順も異なります。



そのため、


・どの部屋をストックヤードにするか

・そこへ何を置くか

・どれくらいの量が出るか


を“最初に”決めておく必要があります。


これを誤ると、

最後に仕分けに追われて作業効率が大幅に落ちます。



解体は段取りで8割が決まる仕事です。




■ 3. 作業前の“安全の初動”




解体を始める前に、建物のライフラインを必ず止める必要があります。


● 電気


電力会社に依頼し、ブレーカーを抜いてもらうまで電源を落とす。


● 水道


メーター手前の元栓を閉める。


● ガス(都市ガス・LPガス共通)


メーターコックを閉め、

管内に残ったガスを一度排出して安全確認。



この3つを確実に行うことが、

“解体で最も危険な事故”を防ぐ第一歩です。




■ 4. 【部屋別】1人で進めるための   安全な順番と壊し方のコツ




部屋ごとに構造や作りが異なるため、

“順番”と“理由”を理解しておくことが安全につながります。




● 和室


・畳は最後に出す(作業中のクッションになる)

・壁を壊すには、鴨居・長押などの化粧材を先に外す

・押入れは道具置き場として後半まで残す

・道具は一か所にまとめて紛失防止

・和室は壊すよりも“化粧材を外す手間”が中心です。




● キッチン


・最初に 蛇口を外すのが鉄則。
 残しておくと、すべてが邪魔になります。

・吊り棚は重量があるため、ビスを外す際は慎重に

・流し台は天板よりも“壁側の固定ビス”を先に外す

・引き出し内部に隠れたビスが多い

一度手前へ引き出してから分解すると安全

・キッチンの難所は“見えないビス”です。




● 風呂


・タイルは振動ドリルなどで割る

・床は根気が必要

・排水管には絶対にゴミを入れない(目張り必須)

・水回りは壊すというより“破損させないこと”が重要です。




● 階段


・壁の解体が終わってから

・ビスや釘は内側から止まっているため、裏側へ回る必要

・最後まで通路として残す

・階段は“家の動線”なので最終工程です。




● 天井裏

・断熱材と埃が落ちるため防塵対策が必須

・主要梁だけ残せばよい

・ここも“構造を露出させる”ことが目的




● 作業効率を大きく上げるコツ


2階に“落下穴(投入口)”を確保する


2階で出た廃材を、1階の指定場所へ落とせるようにするだけで、

作業効率は体感で3倍になります。




■ 5. 解体で最も多い事故   釘・ビスの踏み抜き




解体では、取り外した木材を投げ置く場面が増えます。

その木の裏側に釘が残っていると、

踏み抜き事故が多発します。



事故を防ぐポイントは3つ。


・頻繁な掃除

・作業通路の確保

・木材の向きを一定に揃える


仮囲いでは埃は防げません。

風で舞うため、掃き掃除は必須です。




■ 6. 私が実際に行っていた作業速度  30坪程度なら、遊んでいても5日




これは誇張ではありません。


・2階の解体

・1階の解体

・屋根の瓦下ろし

・小屋組みの露出


これらを 5日程度 で終えてきました。


スピードの理由は

“構造を読む段取り”が整っているからです。



また、

重機がなくても3日あれば解体は終えられる

というのも事実です。




■ 7. 重機が入るのは“金物を外し切ってから”




最も危険なのが、

金物が残った状態で重機を入れることです。


・土台のナット

・羽子板ボルト

・コーチボルト



各種金物

これらがついたまま重機で引くと、

家全体が“つながったまま”動いて事故になります。



重機の投入は

「全ての金物が外れ、構造が読み切れたあと」

これが鉄則です。




■ 8. 解体の結論




解体は力仕事ではありません。

必要なのは“段取り・安全・構造理解”です。



そして、

構造が見えた瞬間に、その部屋の解体は終わりです。



これを繰り返すだけで、

30坪程度の木造住宅なら十分に1人で進められます。



DIYの方は、無理な部分には手を出さず、

この記事でお伝えした“安全と段取り”だけ参考にしてください。



安全第一で、正しい手順を踏めば、

中古住宅の解体は決して難しい作業ではありません。




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