中古マンションのリフォームは戸建てとはまったく別物です【注意喚起】

2025年11月14日 19:49




中古マンションの人気が高まり、自由なリノベーションを求める方が増えています。

しかし実際の現場では、戸建ての延長のように考えて工事を進めた結果、

「見た目は綺麗なのに、生活すると不具合が出る」というケースが後を絶ちません。



今回は、これまで多くの現場を見てきた立場から、

“決して怖がらせるためではなく、正しく知って安心してほしい” という思いで、

中古マンションリフォームの本質をお伝えします。

あなたの物件選びや工事の判断材料として、少しでもお役に立てば幸いです。



マンション内部は“後付けの空間”という事実




中古マンションを見学すると、内装の綺麗さに目を奪われがちです。

「壁も床も整っているし、戸建てと同じ感覚で考えていい」と感じる方も多いかもしれません。



しかし、まず最初に知っておいてほしい事実があります。


マンションの内部は、鉄筋コンクリート(RC)の箱の中に“後から作る空間”であるということ。



この構造思想は、戸建てとは根本から違います。

戸建てでは、内部の壁や床も構造の一部として荷重を支えますが、

マンションは、スラブ(コンクリート床)と躯体壁が建物を支える“側(がわ)”であり、

内部の壁や床は構造体ではありません。



つまり内部空間は、

豆腐に例えるなら「箱の中に入れた柔らかい中身」 のようなものです。

作り方やバランスが悪いと、後から必ず歪みが出ます。



リフォーム業者が「内装だけだから簡単ですよ」と言い切るとき、

この構造思想を理解していない可能性があります。

あなたに不安を感じさせたいのではなく、

“仕組みを知っているかどうか”で結果は大きく変わる のだということを、まずお伝えしたいのです。




スラブの癖・荷重・湿気──マンション特有のリスク




マンションリフォームが難しいと言われる理由は、

“特殊な構造思想”だけではありません。

実は、内部には戸建てでは考えないほど多くの要素が絡んでいます。



その代表例を、できるだけわかりやすくお伝えします。



     ● スラブ(コンクリート床)は“水平ではない”




「マンションの床は平らで当たり前」と思われるかもしれませんが、

実際には築年数が経つほどレベル差が発生している事例が多くあります。



   ・1〜2cmの段差


   ・部分的な傾き


   ・左右前後で高低差がある


   ・仕上げレベルを調整していない物件も存在する



こうした状態のまま浴室やキッチンを大移動すると、

排水勾配が取れずに逆流・階下漏水のリスク が生まれます。

これは大げさな話ではなく、実際に現場で何度も見てきました。



“お風呂を広くしたい”という希望自体は素晴らしいのです。

ただし計画には 「スラブの癖」 が必ず関わってくる。それを知っておいてください。




     ● 荷重のかかり方が複雑





戸建てでは、重い家具を置くときは“床を補強すれば良い”という考え方があります。

しかしマンション内部は、床下地自体が構造体ではないため、

補強の仕方を間違えると逆効果になることもあります。



マンション内部には、


   ・垂直荷重

   ・水平荷重

   ・引っ張り荷重

   ・点荷重(重い家具が一点にかかる)

   ・軽鉄の位置による応力の偏り



こうした複雑な力が同時に働きます。


そのため、施工者が“戸建て感覚”で作ると、しばらく経ってから



   ・ドアが開かない

   ・クロスが割れる

   ・床が沈む



といった“ゆっくり進む破綻”が現れます。



あなたが悪いのではありません。

「マンションにはマンションの設計軸がある」

ただ、それを知らずに工事が進んでしまうケースが多いのです。




     ● マンションは湿気が逃げにくい構造





マンションは戸建てより気密性が高く、湿気が滞留しやすい建物です。


   ・天井裏の結露

   ・配管周辺の湿気

   ・隣室から回る湿気

   ・折り上げ天井にカビが発生する事例



といった問題が起きやすく、

見た目のデザインだけで天井を上げたり、

大きく空間をくり抜くと、知らないうちに湿気が溜まり続ける場合があります。



この章で伝えたいのは、

「気をつければ防げる」という事実 です。

あなたを不安にさせるためではなく、

“正しく知って、後悔しないために必要な知識”として受け取ってください。





中古マンションで失敗しないために必要な視点





実際、私は過去に次のようなケースを見てきました。



・デベロッパー指定業者の見積りが2LDK部分リフォームで2800万円

・不動産会社系列のリフォーム会社が“マンション施工の基本”を理解しておらず、工事が1年半進まなかった

・施工者が下地工事や排水計画の基準を知らないため、施主が裁判に発展



これらを聞くと驚かれるかもしれませんが、

“施主が悪い”という話ではありません。



知らなかっただけです。

そして、知らないまま進めると不幸になるのは施主側です。



だからこそ私は、

あなたに正確な知識を渡したいと思っています。




● マンションリフォームは、専門知識を持った人に相談する





これは、売り込むための言葉ではありません。

あなたが損をしないための“本当に必要な前提”です。



   ・スラブの状態

   ・排水の経路

   ・荷重バランス

   ・軽鉄壁の扱い

   ・湿気処理

   ・共用部との境界

   ・給排水の移設制限



これらを総合して判断できる技術者に出会えるかどうかで、

リフォームの結果は大きく変わります。



“マンションだから簡単でしょ?”

“内装だけならどこでも一緒でしょ?”



そう言われたら、一度だけ深呼吸してください。

あなたの判断材料として、今日知ったことを思い出してもらえたら嬉しいです。




おわりに:正しく知れば、マンションは安心してリフォームできます





中古マンション市場が活発な今、

あなたの選択肢は大きく広がっています。



ただし、

マンションは「戸建ての延長」ではありません。

これを知っておくだけで、後悔する可能性は大きく減ります。



今日お伝えした内容は、

あなたを怖がらせるためではなく、

“正しく知って、安心して進めてほしい”

という気持ちだけで書きました。



マンションは構造さえ理解すれば、

とても住みやすく、美しく生まれ変わる建物です。




どうか、あなたの選ぶ住まいが

安全で、長く快適に過ごせる場所になりますように。




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