旅館業申請において、200㎡という数字は「単なる延べ床面積」ではない。
都内の現場では、この数字を境に審査の取扱いそのものが変わる。
しかし、この事実を知らずに申請準備に入る相談者は未だに多い。
200㎡は“審査区分の境界線”である。
この数字を跨いだ瞬間、担当課が確認するチェック項目は増える。
実務では、立会いの際にこの数字を根拠に「実際はどうなっているのか」を疑われる。
特に都内では、フロア数や部屋数の割り振りだけで判断されず、面積=滞在者数の可能性と捉えられ、安全と衛生の両面
で精査が入る。
誤解が多いが、200㎡を超えたからといって、単純に面積に比例して図面が増えるのではない。
増えるのは「面積が増えることで発生する生活行為に対して、安全・衛生を担保するための証明」のための提出物である。
よって、200㎡を境に図面構成は明確に変わる。
分かりやすい例を上げる。
170㎡の戸建て簡易宿所
→ 配置図・床求積・立面等で済む場合が多い
210㎡の戸建て簡易宿所
→ 給排水ルート、誘導灯の有無、避難経路寸法、詰めた根拠を求められる
面積は“40㎡の差”であっても、行政の扱いは“別物”になる。
宿泊人数が増える蓋然性が上がるためである。
排水負荷、避難動線、衛生域の変化は、同じ戸建てでも扱いが変わる。
消防は誘導灯や避難路寸法の提出を要求し、既存の築年代によっては、そもそも推奨されない可能性すらある。
実務経験として述べる。
一般住宅の延長感覚で工事を進めようとする施工業者は今も存在する。
実際、施主から用途変更図面の依頼を受けた案件において、施工側が避難路幅や竪穴規制を理解しておらず、こちらが全
て指示を出す必要が生じ、結果的に長期化した例がある。
旅館業は「一般住宅」の延長では成立しない。
施工者の理解レベルが、プロジェクトの難度と期間を決める。
200㎡という数字は、旅館業申請において「提出物の質と内容」を分ける境界である。
都内では特に顕著であり、数字を跨いだ瞬間に扱いが変わる。
ゆえに、200㎡は“ただの面積”ではない。
申請に入る前に、まずここを理解している者同士でなければ、手続は破綻する。
大工のおっちゃん工房